Tiemenと別れた僕は、明け方に潮来へ着いた。駐車場で丹さん(以後、りゅう爺)を待っていると、ぐらぐらと車が揺れる。余震だ。ここが被災地であることを、あらためて思い知らされた。
りゅう爺とはTwitterで知り合いになった。春の頃から「霞においで」と誘っていただいたので、「ぜひ!」とお願いしたのだ。りゅう爺は週末のトーナメントにむけて練習しているところで、プラクティスに同船させてもらうことになった。
りゅう爺は竹を割ったような性格だ。やるからには徹底的にやる。言葉と行動が伴わないのをよしとしない。「今日は1匹釣れたらOK。3匹釣れたら万々歳。でも1匹も釣れなかったら、『君は下手だ』って俺は言うよ」と言ってスタートした。
幸先よくクランクで1尾。ほっとした瞬間
りゅう爺からはいろんなことを教わったけど、いちばんおもしろかったのは釣りのフォームの話だ。「フッキングをうまくするにはどうしたらいいかなんてよく聞かれるんだけど、きれいなフォームで釣りをしてるとスムーズにフッキングできる」という。「野球やゴルフと同じできれいなフォームが身についていれば、自然と釣れる」のだ。
僕のフォームもチェックしてもらう。どこが、なぜダメなのか、りゅう爺は教えてくれる。他にも船上でリールをメンテナンスしてもらったり、他のアングラーが残したゴミも回収した。「バス釣りできるところがなくなっちゃうよ!」と、りゅう爺は言った。
2匹目もクランクでクオリティフィッシュ。このサイズを揃えたい
なぜ、このリールはダメなのか。なぜ、ゴミを残すとダメなのか。りゅう爺には理由がある。それは多くの場合、あまり表に出ない話だったりする。りゅう爺の言葉は強いが、その会話は歯切れよくて妙に心地よい。
3匹目もクランク。釣れ方や場所で、トーナメント当日の釣りを予想していく
最後は、桟橋にテキサスとスモラバをいれていく。ギルのアタリで早合わせになりがちだけど、りゅう爺はしっかりとナイスサイズを釣りあげた。この日いちばん時間を割いたのはこのピッチングの釣りだったから、なんとか1本釣りたかったんだけど……午後3時頃に帰着。結果は4本で、すべてクランクベイトだった。
地震で落ちた橋。霞ヶ浦にも震災の爪痕は残っている
報道は福島や宮城、岩手に集中するけれど、崩れた護岸や土のうを積んだ水門、曲がった電柱など、霞ヶ浦もまた被災地なのだ。週末に開催されたW.B.S. 4thの結果は19位で、りゅう爺は年間ランキングで暫定16位。後日、「なんとか踏みとどまった。ありがとう」とメールがきた。こちらこそありがとうございました。また会いましょう!
「さすらいのお魚釣り野郎 ~東北関東被災地行脚編~ 第3夜」につづく