さすらいのお魚釣り野郎 ~九州縦断編~ 最終夜

つりたび

【9日目・昼】

お昼頃、サウナ状態の車で目覚める。
するべきことは、はっきりしていた。

ヒラスズキだ。明日の夜明け直前に、今朝のポイントでヒラスズキをもう一度狙う。明日は旅の最終日なので、長崎からの帰宅にすべての時間を費やさなければならない。明日の朝が、旅のラストチャンスだ。

ウトウトしながら考えていた。最後のチャンスを掴むために、必要なものを揃えなければいけない。とりわけ針が必要だ。連日にわたって使い込んだルアーのフックは、錆びたものが多くなっていた。千載一遇のチャンスをモノにするために、ルアーにベストな針を装着したい。となれば、釣具屋に行く必要がある。今日も空は真っ青だ。日中は暑くて釣りにならないことはわかっている。体力も奪われるので、夜はヘバっている可能性もある。それなら日中の釣りは捨てよう。そのかわり長崎市街へ出向き、装備と体調を調えて夜間にヒラスズキを狙ったほうが得策だろう、と。

適当に見つけた釣具屋で針を買ったあと、平和公園近くのイオス温泉へ。まともにお風呂に入ったのは・・・何日ぶりだろう? 残りの時間はファミレスで待機することにした。ドリンクバーを飲み尽くすほど常駐するw

【最終日】

世間的には土曜日の夜ということもあって、釣り人がチラホラ。他のつり師と競合しても仕方がないので、全員の帰りを寝て待つことにした。深夜2時すぎに目覚めると誰もいなかったので、ソロソロとポイントを覗くと・・・

ヒラスズキ発見。やはり!

さっそく竿を出して、狙ってみると・・・!? なぜか、まったく反応しない。
ルアーの投げすぎでプレッシャーをかけてしまうと厄介なので、車に戻ってしばらく考える。

なぜ反応しないんだ?

考えられる理由はたくさんあった。まず、ヒラスズキの頭が逆をむいていた。昨日は上流をむいていたものが、今日は下流をむいているのだ。これはまだ意味がわかる。昨日よりも時間帯が早いせいもあり、潮が逆なのだ。前日、ここで釣りをしていた時間帯は下げ潮。今日は、まだ上げ潮だ。魚は流れをうけるように頭をむける(はず)ので、なんとなく納得できる。

しかし、問題はもうひとつあった。明暗の境目に魚はいるんだけど、明るい場所ではなく、暗い場所に陣取っているのだ。暗い場所に姿を隠して、明るい部分へ鼻っ面ギリギリをあわせていた。昨日と同じ釣り場、同じ魚がそこにいるはずなのに、状態は180度違っている。暗号のような魚の動きに戸惑いつつも、思わずニヤけてしまう。

考えてもわからない。とにかく、昨日とはまだ時間帯が違う。活性のあがるキーが朝まずめなのか、もしくは下げ潮なのか、それとも他に何か条件があるのか? なにもわからない。とりあえず昨日と同じ時間帯にヒラスズキを観察してみたいという妥協案でもって、明け方まで待つことにした。

5時20分。潮はちょうど下げに切り替わった満潮付近。山からの強い風で、流れは昨日よりも速く感じる。日の出、潮まわり、風。いろいろな条件がいっせいに変わりはじめた。魚の活性を上げるキーが存在するなら、ここで釣れる可能性は高い。満を持して、ポイントをのぞき込むと・・・

ヒラスズキはいなかった

「そうなるか」と思いつつ、「それもそうか」と思う自分もいた。もう考えない。
風のなかで適当に投げていると、南国の魚や、ヒラメが混じった。
夜はゆっくりと明けていく。旅はゆっくりとその幕を降ろした。

はじめて見た、知った魚。イッテンフエダイというらしい
ヒラメ。持っているのは僕だけど、釣ったのはボンバマンだ

さすらいのお魚釣り野郎 ~九州縦断編~ 完

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