さすらいのお魚釣り野郎 ~だれがイトウを幻にした編~ その10

つりたび

目が覚めると、地熱を奪われた大地は透きとおるように寒い。

期待と不安。胸の高鳴りに寂しさも混じって、背筋がピンと張るようだ。

夜明けとともに入水する。今日という日をこうしてむかえたことに感謝したい。

吹き抜ける風は冷たく、手の感覚はすぐになくなったけれど、太陽は張り詰めた緊張感をほぐすようにじわじわと背中を温めてくれる。

イトウ 91cm

遠くはなれた夢の残響も、つかまえることができる。

さすらいのお魚釣り野郎 ~だれがイトウを幻にした編~ その11」につづく

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